通勤時間帯、都心と逆方向の電車はガラガラ。
座っている人たちは、全員スマホを凝視。まるで「情報摂取中」の表示が出ているかのようだ。
昔は音楽を聴く人、寝てる人、本を読む人がいた。今はみんな、スマホという名の情報の自動給餌機に夢中。
よく考えてみた。
乗車前よりも乗車後のほうが、脳内の情報量が増えている。
情報の定義は曖昧にしておくが、スマホから得た何かが脳に侵入しているのは確かだ。
彗星の軌道は変わらないし、地球の質量も変わらない。変わるのは人間の脳の中身。
つまり、人類は進化ではなく、情報で肥満している。
AIに聞いてみたら、情報過多は健康に悪影響を与えるらしい。
これは大変だ。スマホは便利だが、健康を蝕む毒にもなる。
まるで「合法ドラッグ」。しかも中毒者は全員、ポケットにそれを忍ばせている。
思い返せば5年前の10月、私は会社をサボって海へ行った。
毎日の嫌なことが蓄積して疲弊していた。
平日の海岸で石を積み、スマホで写真を撮った。
心は疲れていたが、スマホは手放せなかった。
この時点で、すでに「情報依存症」だったのかもしれない。
石を積む行為は瞑想だったが、スマホで撮った瞬間にSNS用の供物になった。
最近私は一つの自炊を始めた。
まず、スマホのモバイル通信を常時OFFにした。
WiFi環境以外ではネットに繋がらない。
副産物として通信料が安くなる。これは「節約という名の強制断食」だ。
お金持ちにはできないかもしれない。彼らは情報もカロリーも無制限。
電車内や待ち時間には、スマホに入れた音楽を聴く。
目を閉じて、音に身を委ねる。
音楽は古代から治療に使われてきた。
情報ではなく、感情に働きかける。
クラシックでもパンクでも、脳に優しい「音の栄養」だ。
しかも副作用なし。唯一の注意点は、隣の人がヘッドバンギングしてると怖いことくらい。
そして、情報を得る時間を決めた。
私は机に座っているときだけ、情報を摂取する。
スマホではなくPCで。
これは「情報の定時制高校」みたいなものだ。
スマホは24時間営業のコンビニ。便利だが、栄養は偏る。
仕事前にニュースを読み、仕事中に調べ物をし、休憩後に少しネットをザッピングする。
このルールで、情報の暴飲暴食を少しだけ制限できている気がする。
…気のせいかもしれないが。
実は最近、体調が崩れている。
原因不明の不調が同時多発的に発生し、手術も決まった。
情報過多か、加齢か、不健康な生活か。
どれが原因かはわからないが、健康なほうがいいに決まっている。
少なくとも、スマホの通知音で心臓が跳ねる生活は卒業したい。
だから、みんな何か「自炊」してほしい。
情報も、食事も、生活も。
外食ばかりでは、心も体も消化不良になるのだ。
そして、スマホはたまに「絶食」させよう。
それが、現代人の新しい健康法――情報断食である。
