世の中どこを向いても人材不足だ。
店を閉めるコンビニ、人手不足のためしばらく休業しますと張り紙の出た和食レストラン。
人はいったい、どこへ行ったのか。
──どこへも行っていない。
ただ、減っているのだ。
そもそも人口が減り続けている。働ける若い世代が生まれてこない以上、これは必然だ。
加えて、フリーランスや個人事業主、個人クリエーターなど、働き方も大きく変わった。
「雇われて働く人」が減ったのであって、「働く人そのもの」が消えたわけではない。
最近、介護に関係する会社と付き合う機会ができた。
そこであらためて介護業界を眺めてみると、一般企業とは決定的に違う構造を抱えていることが見えてきた。
まず、介護業界は需要が増え続ける運命にある。
通常の業界であれば、市場ニーズの拡大は歓迎される。
しかし、働く人が足りない介護業界にとって、それは悲鳴でしかない。
この先には、いわゆる「2040年問題」が控えている。
団塊ジュニア世代が一気に高齢化し、需要は跳ね上がる。
では、なぜ働く人(供給側)が増えないのか。
大前提として、この仕事には**明確な「向き・不向き」**がある。
人が足りないため、誰でも入口には立てる。
しかし、長続きしない。
人のお世話をする仕事だ。
身体的負担、精神的負担、対人ストレス耐性が求められる。
「死」「排泄」「認知症」と、日常的に向き合う。
これは向かない人の方が多くて当然だ。
感謝はされる。
だが、社会的地位は高くない。
絶対的に必要な職業であるにもかかわらず、「憧れ」にはなりにくい。
さらに、介護報酬は公定価格である。
市場原理が働かないため、利益が出にくく、賃金も上げにくい。
身体の危険、汚れ、重い責任、感情労働、夜勤や不規則勤務。
条件だけ見れば、かなり過酷だ。
それでも、一般企業より収入は低い。
この業界で、誰が働きたいと思うだろう?
ゼロではない。
だが、残るのは多くの場合、使命感が極端に強い人か、ほかに行き場のない人だ。
産業構造として、どこかおかしくはないか。
国がもっと本気で取り組まなければならない問題だと思う。
しかし、市場自由競争を持ち込めば価格は暴騰し、介護格差が生まれる。
公的価格を引き上げ続ければ、国の財政はもたない。
矛盾だらけで、身動きが取れない。
私は、現場で働く人たちが可哀そうになった。
それでも今、約200万人もの人が介護に関わる仕事に従事している。
世の中の公平性や均衡は、崩れていないのか。
この日本を作ってきたのは、いったい誰なのか。
──もっとも、犯人探しをしても何も解決しない。
私の経験則だが、
「いやー、この業界は本当に儲かりませんよ」
そう言う経営者ほど、案外儲かっている。
以前、ある坊さんがそう言っていた。
その住職は、寺のほかにいくつも会社を経営していた。
余裕は、あるところにはある。
介護業界も、全体として儲かっていないのは事実だろう。
だが、経営者だけは儲けている構図があっても不思議ではない。
それが悪いとは言わない。
ただ、介護職にもフリーランスで成り立つ領域があり、今後は確実に広がる。
だからこそ、介護事業を経営する側は、
「そのとき、どう動くのか」
今のうちから考えておくべきだ。
事業所で働く職員が減ってから慌てても、もう遅い。
供給側も人間だ。
神でも仏でもない。
介護職員だって、対価は上げたい。
それは、ごく自然な欲求なのだから

